いくつか、男色(BL)臭のする能の演目を紹介しましたが、先日参加した若衆研さんの講座で狂言にも男色の香りがする作品を教えてもらったので、紹介します。
稚児を取り合う若衆と老武者が…
「老武者」
高貴な身分の稚児がお忍びで藤沢の宿に泊まったところ、稚児に会わせろと若衆(男色大鑑の若衆ではなく、若者という意味)がやってきます。宿の主は断りますが、なし崩し的に宴会をはじめます。そこに老人も稚児と杯を交わしたいとやってきて、若衆と言い争いに。老人は仲間を連れてきて(老武者)、両陣営は乱闘に(色っぽいことにもなりつつ)。
最後は稚児のお目付け役が両者をおさめて、稚児はその場を離れます。
閻魔を尻に敷く地蔵
「八尾」
極楽に死者を取られすぎていて、困窮していた閻魔が地獄の辻で八尾の亡者に出会います。亡者は地獄行きの罪人でしたが、八尾の地蔵からの文を持っていて、その文には亡者は地蔵のスポンサーなので極楽に送ってほしいと書いてありました。
地蔵からの恋文に、閻魔は逆らえず、亡者を極楽に送ります。
主人が稚児(恋人)に送った手紙を破ってしまった部下たち
「文荷」
主人が稚児(恋人)に書いた文を届けるように命令された部下二人。運ぶ途中で、文が重いと、文を途中で開け、しまいには破いてしまうという粗相をします。
がっつりくんずほぐれつという話はないのですが、稚児に若者からお年寄りまで群がったり、恋文送ったり、閻魔と地蔵が恋仲だったり、なにこれ、匂いたつ男色(BL)!
老武者と八尾は、デジタルアーカイブが残っており、国立能楽堂で見る事が可能なようです。
文荷はちょこちょこいろんなところで上演されていて、生の舞台で見る事も出来そう。
いつか見てみたいなと思います。
なお、あらすじは、堂本正樹氏の『男色演劇史』を参考しました。