メガネの備忘録

文豪の人間関係にときめいたり、男色文化を調べたり、古典の美少年を探したりまったりワーク。あくまで素人が備忘録で運用してるブログなので、独断と偏見に満ちており、読んだ人と解釈などが異なると責任持てませんので、転載はご遠慮ください

幻想耽美小説入門に服部まゆみ作品はいかが?『この闇と光』『シメール』おすすめ感想

f:id:todoroki_megane:20210120083527p:plain 気がついたら幻想耽美沼にいる、メガネさんです。 幻想耽美小説の作家さんには、皆川博子先生(著書多数)、山尾悠子先生(これぞ幻想小説の名家だけれど、過去作が手に入りにくい)や須永朝彦先生(過去作が手に入りにくい)など、様々いらっしゃいますが、入門には、読みやすくて、作品も文庫などで手に入れることが出来る服部まゆみ先生がいいと思います! というわけで、服部まゆみ先生の、幻想耽美小説を2編ご紹介します!

甘美なるゴシックミステリ、大どんでん返しがすごい 『この闇と光』

【あらすじ】 森の奥深く囚われた盲目の王女・レイア。父王からの優しく甘やかな愛と光に満ちた鳥籠の世界は、レイアが成長したある日終わりを迎える。そこで目にした驚愕の真実とは……。耽美と幻想に彩られた美しき謎解き! (KADOKAWAサイトより

【読みどころ】 大きな戦争が起きて国王だった父は失脚、母は逃亡中に死亡。 その時に目を負傷して視力を失った、亡国の王女・レイアが主人公です。

森の奥深くに囚われた盲目の王女・レイア、 彼女の世界は優しい父王と意地悪な侍女によって構成されています。 異国のファンタジーを読むように レイアと父王の(と侍女の)の生活を読み進めていくと 本当に異国なのかな、と思わせる描写がちらほら出てきて、 レイアを取り巻く環境への謎が深まります。

レイアが成長したある日、事件が起こり、穏やかな日々は終わりをつげ、 大どんでん返しが待っています。 幻想小説としても秀逸ですし、ミステリとしても面白いです。 全く別物のような1部と2部が鮮やかにつながるとき、 服部先生のストーリーテラーぶりに舌を巻きます。

角川文庫版の表紙の美しさにも注目です!

 

幻が実在となるゴシック・ロマン 『シメール』

【あらすじ】 満開の桜の下、大学教授の片桐は精霊と見紛う少年に出会う。その美を手に入れたいと願う彼の心は、やがて少年と少年の家族を壊してゆき――。陶酔と悲痛な狂気が織りなす、極上のゴシック・サスペンス。 (河出書房新社サイトより

【読みどころ】 大学生時代の同級生夫婦と再会した男性が、その息子の美少年に恋してしまいます。 少年は、二つの名を名乗り、どちらが本当の彼なのか、謎を孕みます。 男性が、美少年を手に入れようとあの手この手をしていたら、少年の家庭が徐々に崩壊。 男性の少年に対する崇拝的な愛が深まれば深まるほど、 人々が壊れていくさまが圧巻です。 これぞ、退廃美! と呼びたくなる作品。 幻想耽美ですが、意外とするっと読めますよ。

いかがでしたか? この2作品は入手しやすくすぐ読めますので、おすすめです。 もし服部まゆみ先生にはまったら、 その他、美に囚われた人々の惨劇を描く、欲望と背徳の伝統的ゴシック・ミステリ『罪深き緑の夏切り裂きジャックをモチーフに大英帝国の首都ロンドンを描いた『一八八八 切り裂きジャック 』未発表作品が収録された『最後の楽園』など、もありますので、 ぜひ読んでみてくださいね!