メガネの備忘録

文豪の人間関係にときめいたり、男色文化を調べたり、古典の美少年を探したりまったりワーク。あくまで素人が備忘録で運用してるブログなので、独断と偏見に満ちており、読んだ人と解釈などが異なると責任持てませんので、転載はご遠慮ください

お能にでてくる美少年を知るシリーズ第1回「菊慈童」のご紹介

f:id:todoroki_megane:20210120083324j:plain こんにちは。メガネです。
以前、能のブロマンス作品「松虫」を紹介しましたが、
その後、実は、能には美少年が多く出てくるというお話を聞きまして
え!? 美少年!? と心湧きたち、
いろいろ調べ始めました。

というわけで、いつまで続くかわからないですが、
能に出てくる美少年を紹介しようシリーズ、
第1回は、「菊慈童」のご紹介です。

あらすじ

物語の舞台は、
卑弥呼が中国に使いを出した国でおなじみ、
「魏」の国、文帝(という治世者)の治世。

酈縣山(れっけんざん/てっけんざん)の麓から霊水が湧き出て、
その源流を探るため、勅使一行が派遣されました。

勅使は山中に一軒の庵を見つけ、観察していると、
庵から一人の風変わりな少年が現れます。
勅使が怪しんで名前を聞くと、
「自分は慈童という者で、周(封神演義太公望伝説でおなじみ)の穆王(ぼくおう)に仕えていました」
と答えます。7百年も昔の話なので、この少年は化け物ではなかろうかと、勅使が怪しむと、少年は答えます。
「ある時、皇帝の枕をまたぐ過ちを犯し、死刑は免れましたが流罪にされ、酈縣山に捨てられました。
皇帝は、自分を憐れみ、ひそかに皇帝の直筆の二句(四句)の偈(経典の言葉)が入った枕をくださったのです」
と証拠として枕を見せました。
勅使もそのありがたさに感銘を受け、慈童と勅使で、その偈(経典の言葉)を唱え味わいました。
慈童は、自分が二句の偈(経典の言葉)を菊の葉っぱに写したところ、その葉に結ぶ露が不老不死の霊水となり、それを飲み続けていたから、七百歳にもなったのだと語り、喜びの舞を披露します。
慈童は、その露の滴りが谷に淵を作り、霊水が湧いていると告げ、勅使らとともに霊水を酒として酌み交わします。
そして、帝に長寿をささげ、繁栄を祈念して、慈童は山中の庵にかえっていくのでした。

補足

皇帝につかえていた少年→小姓さんのお話です。
枕をまたいだだけで、死刑というのは、
当時の皇帝の権力の高さがうかがえます。
死罪は免れ、流罪になりますが、その時、
皇帝直筆のお経の言葉の入った枕を下賜されているあたり、
皇帝もそうとう、慈童に未練があったのでしょう。
きっと眉目秀麗で、よく気が利き、そして皇帝を真摯に愛した小姓ではないかしらと
想像します...!
慈童がずっと皇帝を思い続け、皇帝からいただいた二句(四句)のお経を
大事にし、菊の葉に書き写し、そこに滴った露を飲むというのが何とも雅です。
それが不老長寿の薬になるというのも風流!

太平記』では、菊慈童の話から、今の重陽の宴がはじまった、とあります。
菊が長寿の象徴になったきっかけのお話でもあるのでしょう。

菊慈童の漫画も見つけました。
とても美しい、慈童がでてくるので、ぜひ読んでみてください。

https://www.sukima.me/bv/t/BT0000630785/v/1/s/4/p/1

(このお話では、今の皇帝に仕えず、前の皇帝に操を立てているので、ときめいてしまいました。
700年前に亡くした人を、今も想っているって素敵ですね…しんみり)

なお、下記のサイトを記事の参考・引用に、使わせていただきました
ありがとうございます。
【枕慈童(まくらじどう)/the 能.com】
https://www.the-noh.com/jp/plays/data/program_085.html

それでは第2回があることを祈って! メガネがおおくりしました~