メガネの備忘録

文豪の人間関係にときめいたり、男色文化を調べたり、古典の美少年を探したりまったりワーク。あくまで素人が備忘録で運用してるブログなので、独断と偏見に満ちており、読んだ人と解釈などが異なると責任持てませんので、転載はご遠慮ください

文豪作品は邪推して読め! 江戸川乱歩、太宰治…絶対読むべき近代文学BL作品、3選

f:id:todoroki_megane:20210120084002p:plain 高校の、部活動から卒業する先輩の、ホワイトボードへ書かれた最後のメッセージが、「夏目漱石の『こころ』は邪推して読め!」だったことが強烈に記憶に残っているメガネです。 その後、先生とKの関係をどう邪推するか、友人と盛り上がったことも思い出しました。

さて、近代文学作品、なかなか楽しく読むのは難しいと思っているあなた! 同性愛に偏見がなければ、近代文学でBLが楽しめる作品があるのです! そんな中からメガネお勧めの3作ご紹介します。 これであなたも近代文学が楽しめるはず!

一途な愛が切なすぎる! 『孤島の鬼/江戸川乱歩

https://www.kadokawa.co.jp/product/200901000542/

「……箕浦君、地上の世界の習慣を忘れ、地上の羞恥を捨てて、今こそ、僕の願いを容れて、僕の愛を受けて」

【あらすじ】 主人公「箕浦」は、学生時代、諸戸という先輩に想われつつ、想いに応えませんでした。そして、社会に出て職を持ち、同僚の初代と恋に落ち、結婚を誓い合うのですが、そこに初代を奪うライバルとして、諸戸が登場。箕浦は困惑します。 ある日初代が殺され、初代殺害の犯人を捜すべく、探偵の深山に相談しますが、深山も殺害されます。諸戸を箕浦は犯人と疑うのですが、諸戸も同じ犯人を追っており、黒幕の正体にたどり着きます。 それは、諸戸の父で、初代が大事持っていた系譜図を狙っていたのでした。 諸戸父の本拠地である島に乗り込む諸戸と箕浦。島ではおぞましく不幸に呪われた、残酷な「鬼」の所業ともいえる恐ろしい出来事のオンパレード。 初代の系譜図に載っていた、暗号を解読し、地下へと進む二人が、見たものとは。箕浦の黒かった髪が一晩にして真っ白になるほどのあまりの恐怖とは? 探偵小説、怪奇小説、同性愛小説と、いろんな楽しみ方ができる、江戸川乱歩ならではのエンターメイト小説。

【萌えポイント】 邪推というか、諸戸さんが同性愛者なので、邪推もくそもないです。はい。 諸戸さんは壮絶なバックボーンを抱えつつ、(箕浦のために)その運命からも抗って、ひたむきに箕浦を想うのですが、その恋が決して実らない、悲恋モノです(でも、学生時代、箕浦は結構煮え切らない態度をとっていて、愛していないなら突き放してあげようよ…と思ったのは内緒です)。 箕浦は初代さんを失いますが、ちゃっかり奥さんもゲットする一方、洞窟での決死の告白もうまくいかず、事件解決後は、箕浦と疎遠になりつつも、死の床においても箕浦の名前を呼び続けたとかもう、諸戸さん一途で健気すぎ! 小説で読むのがちょっとという方には、長田ノオト先生やnaked ape先生による、美麗な漫画版も出ていますので、ぜひ読んでください!

憎しみと同じ強さ、愛している 『駆け込み訴え/太宰治

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【あらすじ】 とある場所に駆け込んだ男が、自身の師をどれだけ恨んでいるか憎んでいるか嘲笑しているか、愛しているか力になりたいか側にいたいか一生を捧げてもいいか、切々と訴え、最後には師を裏切るためにこうして告白しているのだと、告げる。

【萌えポイント】 えー、ネタバレしますと、駆け込んだ男はイスカリオテのユダで、彼の師とはイエス・キリストのことです。 イエスを銀貨30枚で売って、裏切る弟子・ユダは、裏切り者の代名詞として知られています。 どうして裏切るに至ったのかを、恨みつらみからはじまり、そこに愛があったと告白し、自分がそばにいないとまでいうのに、裏切り者といわれて、憤慨して飛び出し…。イエスとユダの物語を愛憎を混ぜて、太宰治が鮮やかに流れるように描写しているのがすごいです。 太宰治にも、そういう風に思う相手がいたのではないかと思ってしまうほど、感情がこもっていて、ユダの届かなかった愛を思うと切なくなります。はい。

一人でええ、だれぞ知っててくれて、いつまでも可愛相やおもててくれとる人が一人でもあったら 『口ぶえ/折口信夫

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【あらすじ】 大阪の百済中学校の3年生・漆間安良(うるま・やすら)は上級生からは同性愛の対象として狙われているらしく、とくに岡沢からは強く迫られている。安良自身は同級生の渥美泰造(あつみ・たいぞう)に思いを寄せている。8月の下旬、岡沢と渥美から手紙を受け取った安良は渥美が滞在している京都の山寺に向かう。 安良が京都・西山の山寺に到着した晩、寺の一室で安良と渥美は枕を並べて寝る。その時の渥美の告白に、安良は渥美との心中を考える。 翌日午後、川遊びを終えた安良と渥美は急に思い立ち、「釈迦ヶ嶽(しゃかがたけ)」を目指していちずに歩き始める。黄昏時、釈迦ヶ嶽の頂に到着した二人は心中を心に決め、崖から身を乗り出す。 (椅子は硬いほうがいいサイトより引用)

【萌えポイント】 話が崖から身を乗り出すところで終わっているので、その後どうなったのかとても気になる作品。 国文学者であり民俗学者であり歌人でもある、折口信夫の青春時代の思いを映したのではないかといわれる作品で、渥美のモデルが、折口が中学生の頃、深く憧れていて、若くして亡くなった辰馬桂三や、折口が18歳の時に東京で同棲していた9歳年長の藤無染ではないかといろんな推論があります。 同性愛者だった折口信夫が、何を残したくて書いた作品か、とても興味深いです。

後記

同性愛を扱った文豪の作品といえば、他にも川端康成の「少年」や堀辰雄の「燃ゆる頬」、三島由紀夫の「仮面の告白」など探せば探すほど出てくると思うので、ぜひ、BL視点から、文豪作品に触れていただいて、そのまま近代文学沼に足を踏みいれていただければと思います!

ちなみにもう少し詳しくいろいろ紹介しているのがこちら↓

todoroki-megane.hatenablog.com