昔、雑誌「さぶ」に掲載された「元禄褌考」なる小説の挿絵を描かせていただいた時「我輩は褌である。名前はない。長さは六尺。生地は木綿。」という褌一人称の褌主人公シンデレラストーリーという内容にクラクラした覚えがある。
— 大竹直子 (@naokoohtake6969) August 6, 2014
大竹直子先生が以前呟いていた、さぶ 1975年8月号に掲載された麻耶純夫の「元禄褌考」についての備忘録を載せておく。
なおこの作品は現在書籍化しておらず(していたら教えて下さい)、上記のさぶを入手するしか読むすべがない。国立国会図書館に該当資料があるので遠隔複写は可能。
俺は褌である。名前はない。当たり前である。いくら元禄太平の世とはいえ、いちいち褌に名前をつけるほどの暇人はいまい。
色は白。
生地は木綿。
長さは六尺。…
とあるように、主人公は褌である。
まず、無機物を主人公に仕立て上げたのに驚く。
褌は、さる大名の足軽・七之助・23歳の下着である。
その褌を、フェチのみなさんが嗅ぎに来る(!?)。
ある祭りのときも、七之助は褌をしめていた。
その祭りの興奮の最中、七之助が主君の若君が好きであることが発覚。
祭りののち、若君から、汚い褌選手権が開催される。
褌を一切洗わず、汚して優勝する七之助はとうとう若君と契る中に。
汚い褌に執着した若君は、褌を七之助からもらい受ける。
褌は、持ち主を若君に変わる(そしてどんどん汚れていく)。
京の都で、全国的な規模の褌競いが行われる。
友禅の褌をつける人がいる中で、
若君は真っ黒に染まった褌を身に着け、異様な雰囲気なんだけれど、なんだか妖しくて美しい。
そして、褌競いで、若君が優勝しました
という話です。
サラッとあらすじかきましたけど、読むとすごいうなります。あとドエロです。
褌が主役でこうも濃いゲイ小説が紡げるのか…!? と感嘆します。
どこかで書籍化すればいいのになーと思いますが、
さぶを発行していたサン出版も今はなく、麻耶先生も正体が謎なので、
難しそうです。
面白いのに。
改めて、雑誌に載った小説が本になれるのはすごいことだと思いました。はい。