メガネの備忘録

文豪の人間関係にときめいたり、男色文化を調べたり、古典の美少年を探したりまったりワーク。あくまで素人が備忘録で運用してるブログなので、独断と偏見に満ちており、読んだ人と解釈などが異なると責任持てませんので、転載はご遠慮ください

犬養健の作品について

犬養健「雲」

大学の文科の学生が集って「雲」という同人誌をつくっていた。仲間のうち、井出だけが原稿を出せずにいると、井出の友人が書きかけの小説があるはずだという。それは、彼がいた寄宿学校についてのものだった。
井出は八年制の寄宿学校に在籍、そこでは同性愛の風潮があった。彼が中学3年の5月、見慣れぬ下級生を見つけ、その美少年に惹かれた。美少年は木無瀬といい、公卿出の或る伯爵の弟で、中学1年の或る殿下の御学友に選ばれ、寄宿学校に入学してきた。
重松という生徒が何かと井出と木無瀬を結び付けようとし、事実二人は近づいて行った。夜の森での接吻、修学旅行先で感じた嫉妬、旅行後、木無瀬にたくさん届く上級生からの手紙(恋文?)とそれを吹聴する重松への不快感、二人をくっつけようとした重松こそが木無瀬に執着していたこと。木無瀬の美貌がそろそろ失せてほしいという願い。
原稿にはそんなことが書かれていた。
井出の小説が載った「雲」が発行され、実に四年ぶりに寄宿学校へ行くことになった井出は、同級の山田が同人誌「雲」を読んだこと、木無瀬もまた読んだことを知らされた。
そして、木無瀬と再会。木無瀬が養子に行くことなどを聞く。
井出は木無瀬から解き放たれたと感じたが、同時に友達同志の畸形な反自然的な情熱のなかで、それに幼稚な理屈をつけて、出来るだけ明るく緊張した、出来るだけ高く調和のとれた形にまで引き上げようと努力した、あの笑ってやりたいような愚かさを思い出していた。泣きそうだった。

 

犬養健「一つの時代」

飯村は学校で、気に食わない教師に反感を持ち、下級生の歎願を発端に警察沙汰の悪戯をし、寄宿舎から家に帰され、自宅謹慎になった。
生徒の先頭に立ち、教師に反感していた飯村だったがそれは本心ではなく、本当は一人でいたかった。
謹慎が解け、寄宿舎に戻ると、飯村は以前庇った下級生のYと図書館で毎日一緒に過ごすようになった。Yと一緒に勉強し良い成績を収めた。彼は自分がしたいことをしてやれと思うようになった。

 

『女性』プラトン社 1924年4月号・6月号(犬養健「雲」掲載)
『白樺』洛陽堂 1917年11月(犬養健「一つの時代」掲載)