メガネの備忘録

文豪の人間関係にときめいたり、男色文化を調べたり、古典の美少年を探したりまったりワーク。あくまで素人が備忘録で運用してるブログなので、独断と偏見に満ちており、読んだ人と解釈などが異なると責任持てませんので、転載はご遠慮ください

WEB版【季刊男色】「軍服の男娼たち」の広がりについて

軍隊ソドミア小説をカストリ雑誌の中に探していると、或ることに気が付く。
それは、同じ筋の物語が違う書き手によって何度も描かれていることである。
現在調査している中で、初出と思われる「軍服の男娼たち」の類似物語をいかに紹介していく

 

■軍服の男娼たち とは
真相実話1949年5月号に掲載された、ルポタージュである。
作者は、「そどみい譚」(久松一兵(『猟奇』3号1947年1月刊行)のことと思われる)を書いた平野斗史。
平野は村井という青年から手紙をもらい、かつ実際にあって聞き取りをしたようで、この頃の軍隊ソドミアの語り手は、ソドミア本人ではなく、それを見聞きしたエッセイストたちであることが興味深い。
さて、内容である。
村井は中肉小肥り、女性のような肌を持っていた。もともとソドミアの気質を持っていたところ、漢口に派遣され、上官に誘われソドミアの道へ入り、士官になってからは部下ともソドミアの関係をつくっていた。
終戦後復員し妻帯するもソドミアが忘れられず、また会社勤めより男娼をするほうが稼ぎがいいことを知ると男娼となり、客を持つようになった。
なお、村井は筆者の暗示した解決方法によって、男娼の泥沼から足を洗い、普通の生活を送っているとのことである。

 

■「猟奇男色物語」(怪奇雑誌3巻12号・1950年12月号)
宮園三四郎が「怪奇雑誌」に寄せたエッセイ。
宮内と名乗る青年から、漢口に応召し、隊きっての乱暴者と評判の伍長から愛され、見習士官となったのちは部下の中から二人のチゴさんを選び、交互に可愛がった、という。
ちなみにこの記事、「男色閑談」として『風俗科学創刊号 第1巻第1号』1953年8月号に掲載されている。

 

■「男色部隊」(1951年10月号怪奇雑誌)
「おい、今晩おれの部屋に忍んでこい。可愛がってやるぜ」
女けのない殺伐な兵舎に男同志の夜ばいが始まる。男色関係で結ばれる上官と兵士の狂態。
というセンセーショナルなアバンと、赤坂昭の艶めかしい挿絵が目を引く軍隊男色小説。
村井二等兵が漢口の兵舎で、部隊で乱暴者と評判の城之崎伍長に声をかけられる。何かにつけて村井をかわいがる彼は初年兵の村井に何もさせないのである。
城之崎伍長は手紙の代筆を村井に頼む。二人の距離は近い。代筆する村井の頬に城之崎のひげがあたるほど。
酒の席で城之崎が男同志のY談をはじめる。宴が進むとみな慰安所へ出かけるが村井は城之崎に手を引かれ、二人きりの場所に連れて行かれる。
「おれの気持分かっているか?」という城之崎の問いに村井は分かっていると答える。城之崎は村井に裸になることを望み、城之崎の荒々しい愛撫に村井はただ翻弄された。
その夜、空襲があり、焼夷弾が星のように降ってきた。

城之崎と村井の関係はたちまち部隊で評判になった。それを機に隊中で急に同性愛がはやり、間もなく城之崎が帰還することになり、村井は一人になる。
新しい部隊が入ってきて伊勢二等兵が村井の伝令に決まった。村井は伊勢に惚れ、男色の洗礼を与えてしまう。
滞留が二ヶ月近くなり、教練中に当番になる国尾二等兵目当てで村井は毎日教練に出かけた。国尾は美少年でもてたが誰のチゴにもなっていなかった。
いつの間にか国尾が宿舎に戻ってからも村井の世話を焼き始め、村井には伊勢と国尾の二人の伝令がついたようになった(伝令が二人は部隊長級にならないとつかない)。
村井は国尾にも男色を教え、国尾との享楽にひたるかたわら、伊勢とも交渉を続けていたが、BLでいうところの攻めだったので、たまにはBLでいうところの受けになりたいなどと思うことがあった。
ある日、馬の種付け見物のあと、好色者で噂の高い吉澤中尉に声をかけられ、関係を持つようになった。ある日前触れなしに吉澤の部屋を訪ねると、吉澤と国尾がベッドの上で戯れていた。
村井はカッとしてその場で吉澤と国尾を刺殺してしまおうかと思ったが我慢し耐えた。


■煉獄(アドニス5・6号と7号・昭和28年)
かびやかずひこによる小説。
村井は、城之崎の病死を告げる葉書を受け取る。そして過去の回想。村井が漢口に応召され、城之崎伍長に可愛がられるのを丹念に描いている。
(未完)

 

■「男色遍歴」(風俗クラブ昭和29年5月号)
近藤恭による小説。
幼き頃からソドミーに目覚め、漢口に応召され、須田という伍長にかわいがられ、須田が転属になった後、見習士官となり、伝令になった伊勢をソドミーに引きずり込む。
また、国尾という当番兵にも手を出し、二人の若者と戯れていた。
終戦後復員、田舎暮らしが嫌で上京、結婚したがソドミーが忘れられず上野に行き、男娼と遊び、自分も男娼となり、二人のチゴを思い出させる学生と恋仲になる。

 


■鹿皮の服のわかもの(風俗奇譚5月臨時増刊号 昭和36年
かびやかずひこによる小説。
漢口で竜岡という青年が自分の伝令となる。
緊密な関係になるが、部隊が漢口を去るとともに、二人は別れ別れになる。
戦後、自分は竜岡の面影を持つ青年を追って、ゲイ・バアに行くが相手とは何ともならない。

 

■蘭次郎と私(風俗奇譚 昭和37年3月号)
三宅は漢口に応召され、城之崎伍長に可愛がられる一方で、国尾という二等兵にも心を移し、二人の間を行ったり来たりする。
それを上官の中尉に見とがめられ、上官とも関係を持つ。上官と国尾が戯れているのを目撃し、かっとなって二人を殺しそうになるが踏みとどまる。
その後、4人は転属でバラバラになる。


だいたい、伍長に愛され、二人のチゴを持ち、戦後は男娼になるという筋書きすべてを取り込むか、一部を切り取った話である。

1950年代以降、他の筋の軍隊ソドミア話が多く語られだすが、それにしても、軍服の男娼たちの話の広がり方は目を見張るものがある。
さがすともっとあるかもしれないが、メガネ文庫での調査はこれまでとする。

 

2025年8月24日追記

かびやかずひこ氏が「SMコレクター / 昭和48年12月号」に「軍服の陰花族」というコラムを書いていることを失念していた。登場人物の名前は違うが、おおむね同じ筋の話である。しかし、かびや氏、アドニス、風俗奇譚、SMコレクターといろんな場所に同じ話を書いているが、よほど印象的だったのかしらん。