メガネの備忘録

文豪の人間関係にときめいたり、男色文化を調べたり、古典の美少年を探したりまったりワーク。あくまで素人が備忘録で運用してるブログなので、独断と偏見に満ちており、読んだ人と解釈などが異なると責任持てませんので、転載はご遠慮ください

福島次郎「缶燗酒」詩と眞實2003年8月号 感想

福島次郎と云えば、少年愛のイメージが強いですが(バスタオル有名ですね)、私の中では淫月などに見られる老年愛のほうがグッと心に来ておりまして、平成の綿貫六助と勝手に呼んでいるくらい。
で、ちまちま同人雑誌に福島次郎が書いた作品を集めているのですが、全部が全部同性愛作品ではないんですよね。まあ、普通の同人だものね。ゲイ雑誌ではないものね。
ゲイ雑誌「The KEN」に転載されたという、

創刊号:福島次郎「天草の小島にて」
第3号:福島次郎「黒い時計」
第4号:福島次郎「ボワイエ先生」

のうち、「黒い時計」はとてもいい感じの中年・老年愛のオンパレードで、他の2作もぜひ探し当てたいところです。
誰が掲載された、同人誌の号数ご存じありませんか…。情報求む。

 

さて、タイトルの「缶燗酒」ですが、熊本の同人「詩と眞實」に掲載された作品で、
元鏡職人でいまは営業をやっててお金を持っているお爺さんが、奥さんに逃げられたノンケの中年とその子供のパトロンになって面倒をかいがいしく見ていて、時々そのお爺さんにモーション掛けられる主人公が語り手。
このお爺さんむっちゃチャーミングでねぇ。
主人公に「欣さまの手にキスさせて」とか言っちゃう。家に泊めさせた時、自分の部屋に上がってこないように布団をたくさん掛けたらあとで布団責めに文句言ったりします。ちなみに宿泊のお礼に大きな鏡くれたりします。

主人公の事は好きでも、本命は博打好きな中高年で、相思相愛というより、お爺さんが一目ぼれで前述したようにお金あげたり、サウナで仲睦まじいお爺さん、父、子の姿を見せたりする。

でも幸せは長く続かなくて、お爺さんが死に、お爺さんのことを好いていたかわからないお爺さんの本命君はお爺さんと自分と息子でよく行った丘で自殺してしまう。

そして主人公は、2人の死から数か月後、町で見かけた17歳ぐらいになった息子に本命さんの面影を見るという…。

そんな話なんですが、ぐいぐい読ませる。タイトルの缶燗酒は本命さんが自殺するときに出てくるタイトル回収もうまい。

 

福島作品にはよくゲイの集まる(しかも中高年以上)飯屋が出てきて、その場で繰り広げられる人間模様がとても面白いので、もっと読みたいです。どこにありますか。

 

(ちなみに国立国会図書館で読めます