メガネの備忘録

文豪の人間関係にときめいたり、男色文化を調べたり、古典の美少年を探したりまったりワーク。あくまで素人が備忘録で運用してるブログなので、独断と偏見に満ちており、読んだ人と解釈などが異なると責任持てませんので、転載はご遠慮ください

今日出海「男色鑑」、八木義徳「青頭巾」あらすじまとめ

こんにちは、メガネです。
2022年12月にカストリ雑誌「風俗科学」をよんでいて、下記ツイートをしました。

で、本を探して、「男娼の森」「男色鑑」「青頭巾」は何とか読破。
今日は、その中から「男色鑑」「青頭巾」のあらすじを。

 

今日出海「男色鑑」

 

中公文庫『天皇の帽子』に収録。
大体の生徒が文芸部音楽部の文弱派、柔剣道競技部の蛮カラ派に分かれる中、
どちらにも属さない中立派に牧有人という、眼の大きい、おかっぱ頭の
誰とも付き合わない、生徒がいた。
寄宿寮では決して風呂に入らなかったため、半陰陽とうわさされていた。
茶話会で隠し芸を披露するとき、女装し梅蘭芳に扮した牧は、美しく、彼に一瞬惑う生徒も出た。

牧を断髪するいたずら事件から「私」は牧と親しくなり、
語学で秀才な牧に勉強を教わるようになっていた。
牧は、出戻り女中に童貞を盗まれ、精神的にも肉体的にも女を軽蔑するようになっていたが
言葉遣いは女じみており、懐中鏡を取り出して脂とりの白粉紙で顔の脂をぬぐうなど、
おおよそ高等学校の生徒とは異なる趣味を平気で出していた。
夏に鎌倉の海で牧に出会うと、彼はフランス人の男爵と一緒にいた。
また、青年男女と遊び惚ける「私」に対して、素晴らしい男性に囲まれていると羨んできた。
神経衰弱を理由に、二学期は学校にいけないと、牧は言う。
牧は学校に来なくなり、秋ごろ、「私」は牧が一緒にいたフランス人の男爵が50近い年齢の男色家で、九州で若い漁師と暮らしていること、夏に出会った青年(たぶん牧であろう)が九州まで男爵を追いかけていき、漁師の青年と三角関係となり、新聞沙汰になったことを知る。
高等学校卒業後、学友たちと疎遠になり、新聞社に入った「私」はフランスに行くことになった。
そのフランスの地で紹介されたカフェに行くと、そこで黒い髪をおかっぱにし、真珠の首輪をした牧と再会する。身を持ち崩した淫売婦のような彼は、どす黒い唇、暗紫色の爪、目の周りの隈、輝きを失い濁った眼をしており、肺をやられてもう生きられない、でもここで死にたくない、日本で死にたいと告げた。

青頭巾

 

福武書店八木義徳全集3』に収録。当初は匿名小説。
裁判の席で、被告・笠間一彦は、広田邦夫を殺害しようとした動機として、上田秋成雨月物語の中の「青頭巾」をあげる。
有徳の僧が稚児を得て、愛欲に囚われ、稚児が病で死んだ後も稚児の死体を傍において、腐り爛れる死体の肉を惜しんで食み、人肉の味を知った僧は人を食う鬼となった。ある日大徳の僧に出会い、経歌を与えられ、一年間それを唱え続けた。大徳の僧と一年後再会し、大徳の僧の手で滅ぶと、後には頭にかぶっていた青頭巾と骨だけが残った。という話である。
笠間一彦は一人の少年とその祖父母を殺し、母に傷を負わせ、犯跡隠ぺいのために放火した、殺人同未遂、および放火罪、を犯した。

なぜ、そのような犯行に至ったのか。
一彦は医者の父と愛人で芸妓だった母の間に生まれた。本妻が死んだ後、父と母は入籍したが、小学5年の時に父が病没。遺言にそって、父が運営していた医院は伯父の手に渡り、一彦が将来医者となり一本立ちしたら医院を返還するという条件付きで、母子は伯父に資金援助を受けることになった。
成績優秀な一彦の趣味は機械いじりで、形あるものをバラバラに解体し、元に復元することに異常な興味を示した。
高校生になったころ、一彦は無性に弟が欲しくなる。そして、弟にしたいと運命を感じた中学生の少年・広田邦夫と仲良くなり、性的な興奮を覚える。
しかし邦夫は父が死に、田舎へと行ってしまう。一彦は邦夫の居場所を突き止めあいに行く。会いに行って、一彦は、何も言わずに田舎へ行った邦夫が自分のことを嫌いになった、邦夫に裏切られたと感じる。
その頃、勉強に身が入らなくなっていた一彦は、伯父が父の遺言を無視して、自分の息子に医院を継がせたいと思っていること、それゆえ、伯父からの資金援助が少なくなっていること、なおかつ、下宿している医大生が母と内通していることなどを次々知り、邦夫の裏切り、伯父の裏切り、母の裏切り、と見放された世界に到達してしまう。
そしてすべての憎悪が伯父にも母にも向かわず、邦夫に向かった。彼はいつかみたホルマリン漬けの屍体と「青頭巾」の物語に執着した。
大学進学のための受験勉強は、広田邦夫殺害計画に変わり、邦夫一人を殺せないと判断してからは「広田一家鏖殺計画」に変わった。探偵小説からヒントを得て、決行の直後、放火することにした。
気分は青頭巾の僧の気持ちだった。幻影のなかの邦夫は美しい稚児となった。
一彦は、犯行に及ぶため、「広田邦夫殺害ニ関スル決意事項書類」、「広田邦夫殺害想像ト計画書類」「広田一家鏖殺計画書類」「同右想像図」、短刀、出刃包丁、邦夫の死に顔を写す写真機、邦夫の屍体から肉をはぎ取るためのメスとハサミ、邦夫の血液を採取するための薬莢壜、そしてはぎ取った肉を包むための竹の皮、さらに邦夫のための原稿用紙53枚にわたる「追想録」を一つの荷物にまとめて、家を出た。

 

という感じのお話2つでした。
短いんですけど、読む力を奪われるというか、鬼気迫るというか。
男色~と軽い気持ちで読んでいた自分を叱りたいです、はい。