メガネの備忘録

文豪の人間関係にときめいたり、男色文化を調べたり、古典の美少年を探したりまったりワーク。あくまで素人が備忘録で運用してるブログなので、独断と偏見に満ちており、読んだ人と解釈などが異なると責任持てませんので、転載はご遠慮ください

『賤のおだまき』感想のようなもの

こんにちは、メガネです。
黙々と林月光氏の月光仮面劇場を投稿する人になっていましたが、今日は久しぶりに本の感想など。

 

川端康成氏の『少年』についての考察が大変興味深いなるみさんツイッターでつぶやいていた『賤のおだまき』という作品が気になりまして。
アマゾンさんに注文したら速攻で届きました。ありがとうアマゾン。

 

で、『賤のおだまき』ですが、江戸時代に成立、明治時代に復刻され、本になり、森鴎外などが嗜んでいたそうです。作者は西薩婦女という女性であるという説があり、江戸時代の女性が衆道小説書いていたとは、エモいやないか―と一人突っ込みいれております。はい。腐女子の歴史は江戸時代までさかのぼれるんだ、ちょっと嬉しい。

 

さて、小説のストーリー。
戦国時代末期の薩摩。
平田三五郎宗次は美少年でいろんな人に狙われていましたが、特定の念者(BLでいうところの攻め。若衆;BLでいうところの受けを庇護する)を持つことなく、日々を過ごしていました。ある日、三五郎に恋焦がれた輩に絡まれていたところを白馬にのった王子様よろしく吉田大蔵清家が助けます。
これが縁で義兄弟の契りを交わす二人。もう間に誰も入り込めないほどのアッチアチです。
清家が、朝鮮出兵するとき、三五郎も出兵に手を上げますが年齢が足りません(まだ14歳)。清家の帰りをはらはらしながら待つ日々に、またほかの男に言い寄られそうになりますが、三五郎は潔く跳ね返します。
清家が朝鮮出兵から戻り、また三五郎とねんごろに過ごしていたら、今度は島津氏に内乱が起こり、清家と三五郎はともに挙兵。
内乱のさなか、清家が討ち死にし、三五郎もまた後を追うように討ち死にします。そのとき、三五郎はまだ15歳。花の盛でした。


武士の男色ものはバッドエンドもしくはメリーバッドエンドが多いのですが、美少年の心意気とか、二人のきずなの強さとか、そういうものがたおやかでいながらきりっとした文章で描かれていて読みやすいです(翻訳者の方が上手なのかもしれませんが)。
わりと、するっと読めてしまえるのと、タイトルの『賤のおだまき』には繰り返し読むといい、みたいな意味が込められているらしいので、何度も読んで、そのたびに違った三五郎や清家に出会えるといいなと思います。

あと、意外に挿絵が美麗なので、そこもおすすめポイントかなー。