メガネの備忘録

文豪の人間関係にときめいたり、男色文化を調べたり、古典の美少年を探したりまったりワーク。あくまで素人が備忘録で運用してるブログなので、独断と偏見に満ちており、読んだ人と解釈などが異なると責任持てませんので、転載はご遠慮ください

久富浩司「切腹物語 花の若衆」『風俗奇譚』昭和43年8月臨時増刊号 がドエモかった…

暑中お見舞い申し上げます(よもや7月上旬にこの挨拶をするとは思いませんでした)。

前回紹介した「社会文化史データベース ―性風俗稀少雑誌コレクション」で男色やら稚児やら若衆といったワードで検索かけていたらいろいろ出てきて、運よく『風俗奇譚』昭和43年8月臨時増刊号 が手に入り、その中に掲載のあった久富浩司氏の「切腹物語 花の若衆」がドエモかったので、ご紹介します。

 

18歳の采女は原因不明の病に侵され家にこもっていた。心配した念者(BLでいうところの攻め)の志賀左馬助と一緒に振り袖姿があでやかな16歳の若衆・右京が見舞いに来た。
左馬助は采女の右京を見る姿に、あ、こいつ右京に恋したなー、恋煩いかーと采女と右京の間を取り持つ。殿に固く衆道を禁止されていた右京も実は采女に気が合って、なんやかんやで二人は結ばれるのである(左馬助は念者卒業、采女復活)。

ちなみに采女も美少年ですが、右京はその上を行く美少年です。花がありますね。

あちあちの二人をよそに、右京に言い寄る主膳という武士が現れます。右京は采女を巻き込むまいと、自分ひとりで主膳をどうにかしようとし、ある日主膳と対峙して刀で肩口を斬ります。

右京殿、御乱心――。

討ち死にするくらいなら切腹するという、右京の願いはかなえられます。

切腹当日、采女切腹の場に現れ、死ぬときは一緒と約束したからともに切腹することを選びます。

――後世は一つの蓮(はちす)の上に。

そう言葉を交わして二人は果てるのでした。

 

この物語は采女の若衆から念者への成長物語であること、若衆が二人なので、前髪が残っていて貴重なこと、采女の念者の左馬助の引き際が急ぎよいこと、普段はなよやかな右京が主膳を刀で切りつける雄々しさを見せつけること、ラストは誓い合ったとおりに一緒に死ぬことなど、萌えポイントがたくさんです。

あと、あらすじは思いっきり砕いて書いていますが、原文の表現の美しさよ…。

右京を表現する言葉で

ことばつきだけでは女人かとも思われる、絖(ぬめ)の袴に大振りそで、美しい眉根に愁いを含めて話しかける美少年


にっこりすると、形のよい朱唇がまッ白な歯

ほの白い花のような容貌、露のしたたるような明眸に盛るあいきょうのよき、人あしらいの巧みさ。

とまあ、こんな感じです。

こんな教養溢れる表現で、文章書いてみたいですね。

原文は以下です。