メガネの備忘録

文豪の人間関係にときめいたり、男色文化を調べたり、古典の美少年を探したりまったりワーク。あくまで素人が備忘録で運用してるブログなので、独断と偏見に満ちており、読んだ人と解釈などが異なると責任持てませんので、転載はご遠慮ください

詩の中に綿貫六助が出てきた話

ゲイ雑誌「アドン」1979年6月増刊号に綿貫六助の「丘の上の家」「静かなる復讐」の掲載があるとのこと(花笠海月様、情報ありがとうございます)、
作品掲載だけでなく、綿貫六助についての説明もあり
大宅壮一氏と木村毅氏が綿貫に言及していたらしく、それは新資料じゃないですか!? と鼻息荒くして、
昨晩、国立国会図書館デジタルで該当記事を探していたのですが、なぜかみつかったのが綿貫六助の名前が出てくる詩。
詩ですよ、詩。でもその詩も新資料でした。
次の詩です。

 

めし屋の客

 

(前略)

めし屋にいつも変な客がいた
大名縞の銘仙の褞袍に
黒メルトンの二重まわしを羽織り
懐ろになにやら本を突込んだ
五十がらみの貧相なおやじが
並酒の二合徳利を傾けているのだ
酔えば
菜種の花の活け花をちぎって食べたりする
お照坊と二人で介抱すると
きまって酣叫した
   《つまらん
    字を書くことはつまらん
    小説はつまらん》
その人の名は綿貫六助といった
帝国陸軍の将校を辞して
中年から文学に志したという
流行らぬ文士らしかった
そういえば後ろ姿に孤高の影があった

しがない明け暮れを過ごす僕に
   《つまらん つまらん》
という口癖がこの頃ついたと
老婆お照はいう

緒方昇『天下 詩集』日本未来派の会 1956

 

え、50歳代の綿貫六助の記録じゃないですか!
びっくりしました。
どてらの上に、インバネスコートの短いやつ羽織って、
お花食べたり、酔って寝ちゃう姿を
当時19歳の自由労働者の緒方昇に書かれてるの
ちょっとおもしろい。

 

ちなみに大宅壮一氏のコラムは

医学的根拠ナシ"糖尿病不能説"--<大宅対談>長谷川直義心身医学による夫婦和合のテクニック(週刊文春 12(21)(574);1970・6・1)

ウンカの如き文学陣『大学の顔役』大宅壮一 著. 文芸春秋新社, 1959

ではないかなと。複写取り寄せてみないとわかりませんが。
木村氏は調査中です。