メガネの備忘録

文豪の人間関係にときめいたり、男色文化を調べたり、古典の美少年を探したりまったりワーク。あくまで素人が備忘録で運用してるブログなので、独断と偏見に満ちており、読んだ人と解釈などが異なると責任持てませんので、転載はご遠慮ください

中田道元「屈折した幸福」覚書

林月光の絵の収集で、たくさんの女装男子絵を見せてくれた中田道元「屈折した幸福」に少し触れておきます。
掲載誌は、アント商事の女装交流誌 くいーん(Queen)通号 48号 (1988.6)~
通号 61号(1990.8)。
すでに休刊となっていて、入手は結構困難です。国立国会図書館にすべてではありませんが所蔵が確認できます。

主人公邦男は、12歳の時美術の先生にヌードモデルを持ち掛けられます。しかも、女性モデルの代わりとあって、女性的なふるまいを求められ困惑。挙句性的行為にまで及び、母親にそのことを報告すると、先生は免職となります。

邦男が高校生の時、たまたま黒服に連れていかれたバーで美術の先生と再会。先生は女装しており、女装者で作る、バーを経営してました。邦男には素質があるとその日のうちに化粧・女装をさせ、その道に引きずり込みます。
邦子と名乗って働く邦男のもとに、本物の女装者を目指さないかと、パトロンが現れます。そこから始まるマイフェアレディみたいなお話。
服装、所作、化粧、何から何まで女性に近づくための努力が始まります。
そして、女装者の集大成として、パトロンと一夜を共にして、女優を目指したいという邦男。けれど、その道は彼に開かれませんでした。
母と姉には女装者であることをカミングアウトした邦男、姉が夜のホステスの仕事をしており、それに続くようにホステスになります。
そして、売り上げを上げるために、一層努力する邦男。源氏名も「舞子」と名乗ります。

夜の世界で、ノンケの男に恋したり、姉の恋人奪いそうになったり、同じ職場の後輩と精神的レズビアン関係になりかけたり、波乱万丈の人生。
結局、「女」として(真に女になるために)、「男」が欲しい(男に抱かれたい)など、志とても高いです。

 

女性がボーイズラブの世界で、理想の男性をくみ上げるように、QUEEN上では、女性になりたかった男性たちが、なりたい理想の女性像をくみ上げ、その集大成みたいな小説だなと思いました。

 

今まで読んだことのない、小説の世界で、また、刺戟的でもあり、すごいなぁと思いました。

その作品に花を添えている林月光氏のイラストのなんとも美麗なこと。無邪気な舞子から、妖艶な舞子までいろいろそろっていて、美しいに尽きます。はい。